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技術資料概要(TR-B32)

1.技術資料の概要

技術資料番号 ARIB TR-B32
技術資料名 デジタルテレビ放送番組におけるラウドネス運用規定
策定年月日 2011年3月28日
技術資料概要

本技術資料は、デジタルテレビ放送におけるラウドネス運用基準と最大許容ピークレベルについての技術要件を取りまとめたものである。

本技術資料は、デジタルテレビ放送において、制作、搬入、交換及び送出するすべての完成番組の音声信号に適用する。なお、番組とは、一般番組やCMなどを指す。


 キーワード(用語と略語)

キーワード 説明
A特性 騒音レベルを測定するときに使用する聴感補正フィルタの特性。「騒音レベル」はA特性フィルタを挿入して測定した値(A特性音圧レベル)のことを言う。人の聴覚は周波数によって感度が異なる(例えば低域周波数の音は聞こえにくいなど)ので、騒音レベルを測定するときはマイクロフォンの入力信号に対して補正を行う必要がある。その補正に使用するのがA特性フィルタである。
B特性 騒音レベルを測定するときに使用していた聴感補正フィルタ特性のひとつであるが、現在の騒音計では使われていない。中レベルの騒音測定用として規定されていた。
dBTP Rec. ITU-R BS.1770で規定されている、オーバーサンプリングによるピークレベル測定アルゴリズムを使用したトゥルーピークメータのレベルを表す単位。トゥルーピークの測定はオーバーサンプリングの倍数が大きいほど精度は良くなるが、計算量が多くなるため、実際には4倍オーバーサンプリングが適当とされている。
IIRフィルタ デジタルフィルタのひとつ。巡回型フィルタで、出力を入力にフィードバックする構成となっている。インパルスの応答が無限となる。無限インパルス応答フィルタ。
K特性 Rec. ITU-R BS.1770で規定されている聴感補正フィルタの特性。2つのプリフィルタで構成されており、1段目は頭部音響効果をシミュレーションしたフィルタで、2段目がRLB特性フィルタとなっている。K特性フィルタを使用することにより、人の聴感特性に近い測定が可能となる。
LKFS Rec. ITU-R BS.1770で規定されているラウドネス測定アルゴリズムによって計算したラウドネス値の単位。
LU ラウドネスメータで使用するラウドネス値の単位。ターゲットラウドネス値を0LUとしてラウドネスの相対値を表す。1LUの変化は1dBの変化と等しい。
RLB特性 Rec. ITU-R BS.1770で定義されているK特性の2段目のフィルタ特性。B特性を修正した特性となっているので修正B特性と呼ばれる。
VUメータ 音声信号の音量を測定する計器。音声信号をVolume Unitという音量の単位に置き換え、人の感じる音量感に近いメータ指示が得られるように設計されている。入力信号に対するメータの応答時間は0.3秒で99%指示となっており、立ち上がりの早いピーク信号には正確に応答しないという問題もあるが、長年使用されている。
オーバーサンプリング(oversampling) アナログ信号をデジタル信号に変換するとき、又はデジタル信号をアナログ信号に変換するときに、実際のサンプリング周波数の何倍かのサンプリング周波数を用いて処理を行なうことを言う。
オーバーラップ法(overlapping) 本技術資料では、隣接するゲーティングブロックを互いに重複させながら分割する手法のことを言う。オーバーラップの量は75%(300ms)とする。
ゲーティング(gating) 被測定値をある閾値により分別すること。本技術資料で述べているラウドネス値の計算アルゴリズムでは、ラウドネス値を求めるために絶対ゲーティングと相対ゲーティングを用いて、閾値より小さい値を除去している。こうすることで、より主観に近いラウドネス値が得られる。
ゲーティングブロック(gating block) 本技術資料では、ラウドネス計算においてゲーティングを適用するために、入力信号を400ms長のブロックに分割する。その1区間をゲーティングブロックと呼ぶ。
サンプルピーク(sample peak) 符号化されたデジタル信号のピークのことを言う。通常のピークメータ(サンプルピークメータ)は、ある一定区間ごとのデジタル信号の最大値をピークレベルとして表示している。
ダウンミックス(down-mix) 3チャンネル以上の音響信号を2(又は1)チャンネルに再構成することを言うが、一般的には5.1chサラウンドサウンドを2チャンネル(ステレオ)に変換する場合に使用している。
ターゲットラウドネス値(target loudness level) 番組の聴取レベルを適正に保つために目標とする「番組の平均ラウドネス値」のことを言う。
デジタル信号 本技術資料では特に指定しない限り「リニアPCMデジタル信号」のことを言う。
トゥルーピーク(true-peak) アナログ信号のピークのことを言う。「真のピーク」とも言う。一般的に使用されているサンプルピークメータでは、サンプルとサンプルの間に実際のピークレベルが存在する場合もあり、トゥルーピークを表示できないことがある。オーバーサンプリング後のピークを、便宜上トゥルーピークと呼ぶ場合もあるので、混同しないこと。
ノーマライズ(normalize) 本技術資料では平均音声レベルの異なる番組を、ある基準レベルに合わせ再生音量を均一化することを言う。
フルビット(full bit) デジタル信号の最大符号値。0dBFS やFull Scale Digitalなどと呼ぶこともある。
ヘッドルーム(head room) 基準レベルからクリッピングレベルまでのマージンのことを言う。デジタル信号では基準レベルからフルビットまでがヘッドルームとなる。
メタデータ(metadata) 本技術資料では音声信号に付加して、その信号の制御情報を記述したデータのことを言う。送出する音声信号にメタデータを付加することで音声品質の制御などをすることができる。
ラウドネス(loudness) 人が感じる音の大きさ(音の感覚量)のこと。
ラウドネス値(loudness level) 本技術資料では、デジタル録音レベルからラウドネス測定アルゴリズムに基づいて算出したラウドネスの計算値に対する、一般名称として「ラウドネス値」を使用する。ゲーティング処理を行わない場合の計算値、ゲーティングブロック(400ms長)内での計算値、絶対ゲーティング及び相対ゲーティング後の計算値など、異なる計算方法で求めた値に対し、特に区別しない場合は「ラウドネス値」と呼び、単位にLKFSを用いる。
リニアPCM パルス符号変調のひとつ。標本化、量子化、符号化の基本プロセスを持つが、符号化を行うときにデータ圧縮を行わない方式。一般にPCMというとリニアPCMを指すことが多い。他にAPCM、ADPCMなどがある。
レベルセット 機器やシステム間の基準レベルの違いを調整すること。また、デジタル信号をD/A変換し、アナログ録音する場合もレベルセットを必要とする。
音声モード モノ、ステレオ、2音声、サラウンドなどの音声方式のことを言う。
絶対ゲーティング(absolute gating) 本技術資料では、無音とみなせる絶対閾値-70LKFS以下のゲーティングブロックを除去する処理のことを言う。
相対ゲーティング(relative gating) 本技術資料では絶対ゲーティング後のラウドネス値から10dB小さい相対閾値以下のゲーティングブロックを除去する処理のことを言う。
等価騒音レベル 時間とともに変動する騒音(変動騒音)について、測定区間Tの総エネルギーを時間平均してレベル表示した値。測定区間Tの平均エネルギーは音圧(瞬時音圧)を二乗してから時間平均することで求める。また、等価騒音レベルは、変動騒音区間Tでの平均エネルギーと等しい平均エネルギーを持つ定常騒音の騒音レベルとして表している。等価騒音レベルは、正式には量記号にLAeq,Tを使用し、単位記号にdBを使用する。慣例として、量記号にLAeq、LAeq及びLeqを用いる場合や、単位記号のdB(A)あるいはdBAのみを用いて表す場合がある。等価騒音レベルを含め「騒音レベル」を測定する場合はA特性聴感補正を用いる。
平均ラウドネス値 第3章で述べている、すべてのゲーティング処理を含んだラウドネス測定アルゴリズムを用いて算出した、任意の測定区間のラウドネス値のこと。ロングタームラウドネスあるいはインテグレーテッドラウドネスと呼ぶ場合もある。また、「番組の平均ラウドネス値」と言った場合は、番組の開始から終了までを測定区間とした平均ラウドネス値のことを言う。

2.改定の概要

版数 策定又は改定日 改定の概要
1.5版 2016.09.29  2016 年7月にARIB STD-B59:三次元マルチチャンネル音響方式スタジオ規格が改定されたのを受け、7.1chのチャンネルラベルと重み係数を追記するとともに、22.2ch、7.1chの重み係数を確認するためのチェック信号を追記するものである。
 さらに、プリフィルタの利得に対する補正値が、1kHz正弦波ではなく、997Hz正弦波に対応していることを明記するとともに、用語の統一と明確化を目的とした修正を行った。
1.4版 2015.12.03  従来の5.1chまでの測定法であるRec. ITU-R BS.1770-3が5.1chを超える三次元音響用の測定法に拡張され、BS. 1770-4に改訂されたことを受け、本技術資料を5.1chを超えるチャンネル数に対して拡張するものである。
1.3版 2015.07.03  音声モードがモノの場合の平均ラウドネス値の測定法を明確化するものである。
1.2版 2013.12.10  本技術資料の目的があくまで平均ラウドネス値及びトゥルーピーク値により番組を管理するための規定であることを明確化するとともに、短時間計測モードはそのスコープの範囲外であり、「参考資料」の位置づけでRec. ITU-R BS.1771に記述されているメータ特性及び要件について、情報として追加を行うものである。
1.1版 2013.03.19  本技術資料は、ITU-R勧告BS.1770で規定されるラウドネス測定アルゴリズムに基づいた運用を規定しており、この規定に基づくラウドネスメータを用いて、番組全体の音の平均ラウドネス値を求め、その値を一定とすることで番組の音量差を最適化しているが、ラウドネスによる音声レベル管理が実運用されるにあたり、ラウドネスメータが本技術資料で規定するアルゴリズムに準拠しているか否かを確認するための手法が求められていた。
 今回の改定は、7種類のチェック信号を規定し、この信号をラウドネスメータで測定することで、測定値と期待値を比較し動作確認を可能とするようにするものである。
1.0版 2011.03.28  策定

3.一部閲覧(最新版)

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